有給休暇の付与日数と「年5日取得義務」入門|管理のつまずきどころ
「有給って、いつ何日もらえるんでしたっけ?」「年5日、取らせないといけないのは分かるけど、いつからいつまでの1年で数えるの?」——有給休暇(年次有給休暇)は、働く人なら誰もが関わる制度なのに、いざ管理する側に回るとルールの細部でつまずきがちです。特に、入社日が人それぞれ違う職場では、誰がいつ何日付与され、時効でいつ消えて、義務の5日を満たしているのか——これを頭の中だけで追うのは、まず無理があります。
この記事では、労働基準法39条にもとづく有給の付与日数(勤続6ヶ月で10日から始まる基本テーブルと、パートの比例付与)を確認したうえで、2年で消える時効と繰越の関係、そして2019年から始まった「年5日取得義務」のしくみを、実務目線で整理します。あわせて、管理が静かに破綻しやすいポイントと、それを管理表で見える化する考え方までまとめました。なお、本記事で触れる法定数値は2026年7月時点の制度を前提とした一般的な説明です。実際の付与・運用の最終判断は、就業規則および社会保険労務士・公式情報(厚生労働省など)でご確認ください。
有給はいつ・何日もらえる?労基法39条の付与テーブル
有給休暇は、入社してすぐ満額もらえるわけではありません。労働基準法39条では、雇い入れの日から6ヶ月間継続して勤務し、その間の出勤率が全労働日の8割以上であれば、最初の10日が付与される、という考え方が基本になっています。以後は勤続年数に応じて日数が増えていきます。
週5日勤務(または週30時間以上勤務)などの通常のフルタイム勤務では、付与日数はおおむね次のように定められています(2026年7月時点・労働基準法39条)。
| 勤続年数 | 付与日数(通常付与) |
|---|---|
| 6ヶ月 | 10日 |
| 1年6ヶ月 | 11日 |
| 2年6ヶ月 | 12日 |
| 3年6ヶ月 | 14日 |
| 4年6ヶ月 | 16日 |
| 5年6ヶ月 | 18日 |
| 6年6ヶ月以降 | 20日(上限) |
ポイントは、6ヶ月の次が1年6ヶ月、その次が2年6ヶ月……と、入社日から数えて半年後を最初の区切り(基準日)にして、以後1年ごとに付与される点です。そして3年6ヶ月以降は増え方が2日ずつになり、6年6ヶ月で20日に達すると、それ以上は増えません。
見落とされがちなのが、週の勤務日数が少ないパート・アルバイトへの比例付与です。週の所定労働日数が1〜4日(かつ週30時間未満)の人にも有給は発生しますが、日数はフルタイムより少なく、労働基準法施行規則で勤務日数と勤続年数の組み合わせごとに定められています。たとえば週4日勤務で勤続6ヶ月なら7日、というように比例した日数になります。「パートだから有給はない」という思い込みは誤りで、条件を満たせば当然に付与されます(具体的な比例付与の日数は施行規則の表でご確認ください)。
繰越と時効:有給は2年で消える
付与された有給を1年で使い切れなかった場合、残った分は翌年度に繰り越しできます。ただし、無期限ではありません。労働基準法上、有給を請求する権利は付与された日から2年で時効により消滅する、というのが一般的な扱いです(2026年7月時点)。つまり、ある年に付与された分は、その年と翌年の2年間で使わなければ失効します。
ここで管理が少しややこしくなるのが、「前年からの繰越分」と「今年の新しい付与分」が同時に残高として存在する場面です。どちらから先に消化したとみなすかは運用によりますが、時効で無駄に失効させないためには、古い付与分(繰越分)から先に使うと整理しておくのが分かりやすく、実務でもよく採られる考え方です。新しい付与分を先に使ってしまうと、古い分が使われないまま2年の期限を迎えて消えてしまう、という取りこぼしが起きやすいためです。
言い換えると、有給残高は「一つの数字」ではなく、付与された年ごとの束が積み重なったものだと捉えると、時効の管理が正確になります。どの束がいつ発生し、いつ2年の期限を迎えるのか——ここを取り違えると、本来使えたはずの有給を失効させたり、逆に残数を多く見積もってしまったりします。
「年5日取得義務」とは何か(2019年施行)
2019年4月から、働き方改革関連法による労働基準法の改正で、いわゆる年5日の取得義務が始まりました(労働基準法39条第7項、2026年7月時点)。これは、有給が年10日以上付与される労働者について、使用者(会社)が、付与した日から1年以内に少なくとも5日は取得させなければならない、という義務です。本人が自発的に取得した日数や、計画的付与(計画年休)で取得した日数を差し引いて、それでも5日に届かない分は、会社が時季を指定してでも取得させる必要があります。
実務で押さえておきたいのは、「いつからいつまでの1年で5日を数えるのか」という基準期間です。原則として、その人に有給が付与された基準日(たとえば入社6ヶ月後の日)を起点に、そこから1年間で数えます。入社日が人によって違えば、この「5日を数える1年」も人によってずれる、ということです。全員を4月〜翌3月のような暦年度でひとまとめに数えられるとは限らない、という点が、後述する管理の難所につながります。
- 対象になる人
- 年10日以上の有給が付与される人。比例付与で10日未満の人は、この義務の対象外です(取得させること自体は望ましいものの、5日の義務としては数えません)。
- 数える単位
- 1日単位のほか、半日(0.5日)取得も原則として日数にカウントできます。一方で、時間単位で取得する年休は、この5日の義務の日数には含められない扱いとされている点に注意が必要です。
なぜ管理が破綻するのか:つまずきやすい4点
制度そのものは上記の通りですが、実際の職場でこれを人力で回そうとすると、いくつかの決まった場所でつまずきます。
- 入社日がバラバラで基準日が揃わない——一人ひとり付与日も、年5日を数える1年間も違います。全員分の基準日をカレンダーで追うのは、人数が増えるほど非現実的になります(全社で基準日を統一する「一斉付与」という運用もありますが、その場合は前倒し付与など別の配慮が必要です)。
- 半日取得・端数の扱い——半日(0.5日)取得が混ざると、残数も「今年何日取ったか」も小数で管理することになり、手計算で足し引きしていると合わない、という事故が起きがちです。
- 繰越分と当年分の混在——前述の通り、束ごとに時効が違うため、単純な引き算では「いつ何日失効したか」を見失います。
- 出勤率8割の要件——付与には原則として出勤率8割以上という条件があり、これを満たさない期間は付与が発生しません。この判定まで手作業に含めると、さらに煩雑になります。
これらはどれも、「一つのタスクとしては簡単だが、人数×年数の分だけ掛け算で膨らむ」たぐいの作業です。だからこそ、頭や紙で追うのをやめて、入力したら自動で計算される形に載せ替えるのが現実的な打ち手になります。
管理表で「見える化」する
破綻の共通点は、「誰が・いつ付与され・いま何日残っていて・義務の5日を満たしているか」が一覧で見えないことにあります。逆に言えば、この4点が一目で分かる状態を作れれば、管理の負担は大きく下がります。
そのために効くのが、入社日と勤務日数、取得記録を入れたら、付与日数・現在残数・年5日の達成状況が自動で出る仕組みです。基準日を人ごとに追う必要がなくなり、半日取得や繰越・時効の計算も取りこぼしにくくなります。表として一覧できれば、「今月末で義務未達になりそうな人」を早めに拾い、時季指定の相談を前もって進める、といった先回りもしやすくなります。管理は「あとで慌てて数える」ものから、「常に見えている」ものへ変わります。
付与日数・残数・年5日義務を、入力するだけで自動計算。
「有給休暇管理表」は会員登録不要・完全無料。社員の入社日・週所定労働日数・取得記録を入れると、労働基準法39条にもとづく付与日数(パートの比例付与にも対応)、2年時効を考慮した現在残数、年5日取得義務の達成状況を、評価日(基準日)を指定して自動計算します。半日取得(0.5日)にも対応し、付与履歴では時効・消化(古い付与分から順に充当)の内訳も確認できます。データはお使いの端末内だけで処理され、サーバーには送信されません。
作成した管理表はCSVで出力・取込ができ、印刷にも対応しているので、これまで表計算ソフトで管理してきた内容を捨てずに移行・併用できます。なお、このツールは一斉付与・前倒し付与には対応せず入社日基準で計算し、出勤率8割の要件は常に満たす前提で扱います。基準となる付与テーブルや義務日数は法改正時に設定で上書きできますが、正確性を保証するものではないため、最終的な付与・管理の判断は就業規則および社会保険労務士・公式情報でご確認ください。
まとめ
有給休暇の管理は、いくつかの土台を押さえるだけで見通しが良くなります。まず、付与は入社6ヶ月後の10日から始まり、勤続に応じて増えて6年6ヶ月で20日に達すること。週の勤務日数が少ないパートにも比例付与があること。次に、付与された有給は2年で時効消滅するため、繰越分と当年分を束として区別し、古い分から使うと取りこぼしにくいこと。
そして2019年施行の年5日取得義務は、年10日以上付与される人が対象で、付与日を起点とした1年間で数えること。入社日がバラバラだと基準日も義務を数える期間も人ごとに違い、半日取得や時効と相まって手作業では破綻しやすいこと——ここまで理解できれば、あとは「入力したら自動で出る」形に載せ替えるのが近道です。本記事の法定数値は2026年7月時点の一般的な説明であり、実際の運用は必ず就業規則と公式情報・専門家で確認したうえで、まずは自社の社員一覧を管理表に入れてみるところから始めてみてください。